(Hine's 兄さん) 徒然雑記

不定期更新ですが、徒然に思うコトを書きとめてみる

本物の「不良」ジョン レノン

「安い席の方は拍手をお願いします」
「それ以外の方々は、すみませんが宝石をジャラジャラ鳴らしてください」
と、皇室御前コンサートで、エリザベス女王ほか王族も観ている前で
ジョン レノンが客席に向かって語り掛けた。
会場は爆笑となったが、本物の「不良」とは、彼のような人間を指すのかも知れない。
いや、「不良」ではなく「イノベーター」(innovator)といった方がハマる気がする。
単に周りの人に迷惑をかけているだけの、別の意味の「不良」ではないし、
イキがって、暴力に訴えるチンピラまがいのヤンキーでもない。
愚痴っぽいが、知性を感じる痛快な「不良兄ちゃん」の冗談であったと思う。


当時、60年代の初頭、「白人至上主義」は当たりの常識として全世界に存在していた。
ザ・ビートルズが、アメリカ・フロリダ州のジャクソンビルでライブを行おうとした時、
席が人種によってすみ分けられていることに気づいたザ・ビートルズの面々は、
演奏するのを拒否し、公演は中止された。
さらに彼らは、「観客が人種によってすみ分けられている会場では演奏しない」
という条項を契約書に記載させた。
人種差別なんて、彼らにとってはバカげたコトで、
彼らも白人ではあるが、彼らには「白人至上主義」は必要なかった。
今でこそ、人種差別は「悪」とされるが、
当時、それは「正しい」コトと理解されていたにも拘らず、拒否した。


1966年3月4日、ロンドン・イブニング・スタンダード紙のモーリーン・クリーヴとの
インタビューでジョン レノンはあの有名な発言を行いう。


「キリスト教はなくなるよ。いつか衰えていって消えるだろう。
そんなことあれこれ論じる必要もない。
僕の言っていることは正しいし、いつか正しいことが証明されるはずだ。
今の僕らはキリストより人気がある。
ロックン・ロールとキリスト教と、どっちが先にすたれるかはわからないけれど。
キリストそのものには問題なかった、でも彼の弟子たちが頭の悪い凡人だったんだよ。
僕に言わせれば、彼らがキリスト教をねじ曲げて堕落させたんだ」


この発言はイギリスではほとんど無視され、大きな反響を呼ばなかったが、
同年7月にアメリカのファンマガジン『デートブック』に再収録されると、
バイブル・ベルト(キリスト教根本主義が信奉される南部や中西部)の
保守的宗教団体によるアンチ・ビートルズ活動に結びついた。
ラジオ局はビートルズの曲の放送を禁止し、彼らのレコードやグッズが燃やされた。
スペイン及びバチカンはジョンの言葉を非難し、南アフリカ共和国はビートルズの
ラジオ放送を禁止した。
最終的に、1966年8月11日にジョンはシカゴで以下のように釈明会見を行い、
バチカンも彼の謝罪を受け入れた。


「あんな騒ぎを引き起こしたことについては悪いと思っている。
だけど反宗教的な意味合いはまったくなかった。
僕は神に反対しているわけでも、キリストや宗教に反対しているわけでもない。
キリストをけなしもしなければ非難もしていない。
あくまで事実としてああ言ったまでだし、イギリスでは実際そうなんだ
ただ、キリスト教は衰えつつあり、現代の状況を見失っているんじゃないか、
本来の姿を取り戻そうとしているようにも思えない」


と、さりげなく火に油そそいでいる。
というか、反省なんてしてない、それは彼の「イマジン」を聞けばよく解る。
「争いのために神の名を使うな、信仰は絶対、利用してはいけない」
それが彼の確信であったのかと思う。


イエス・キリストは、当時のユダヤ教において、反体制的な革命児であり、
ユダヤ教の聖職者たちには「不良」と認識されていたに違いない。
ジョンも60年代のキリスト教への反体制的な革命児であったと思う。
まぁ、人種差別にしろ、ベトナム戦争にしろ、皇室御前コンサートにしろ、
「どのような国に生まれようとも、どのような境遇であろうとも、
私たちは同じ神の子であり、等しく神の性質を宿している」

という、宗教的真実を広めることが、悲劇を止める力になりえると、
彼は信じていたからこその発言であったように思う。


「イノベーター」とは、革新者とか新しい動向のつくり手として見えるが、
実は、彼のように普遍的な価値を説く者のことをいうのかも知れない。