(Hine's 兄さん) 徒然雑記

不定期更新ですが、徒然に思うコトを書きとめてみる

「Get Back」とグローバリズム-2

1969年1月30日にザ・ビートルズがイギリス・ロンドンのサヴィル・ロウにあった
アップル・コアの屋上で、映画撮影のために突如行ったゲリラライヴ。
「ルーフトップ・コンサート」
事実上ビートルズの最後の歴史的なライヴ・パフォーマンスとされている。


まぁ、ご存知の方も多いとは思うが、
このライヴ・パフォーマンスで、3回も演奏されたのが「Get Back」
実はこの曲、当初は『Don’t Dig No Pakistanis』というタイトルが付いていた。
直訳すると、「パキスタン人は不要」


当時、パキスタンから流入してくる大量の移民が、イギリス人労働者の
仕事を奪っていると問題になり、パキスタン人を排除しようとする空気が
イギリス中に広まっていた。
大ヒット中の映画「ボヘミアンラプソディ」で、フレディ・マーキュリーが
ヒースロー空港でアルバイト中に「パキスタン人か」と、からかわれるシーンがある。
フレディは「パキスタン人じゃない!」と反論するが、当時の移民はそういう風に
見られていたコトを現すシーンが見れる。
彼はパキスタン人ではないが移民なので、からかわれるコトも多かったかも知れない。


ともあれ、曲を手掛けたポール・マッカートニーは人種差別を嫌う。
イギリスにあった、パキスタン人への空気に対し逆説的な歌詞で
曲を仕上げようと試みるのだが、かえって問題が大きくなると反対され、
その結果、我々の知る『ゲット・バック』に変更された、という経緯がある。
あの決めゼリフ「Get back to where you once belonged」(元いた場所に戻れ)は、
『Don’t Dig No Pakistanis』の名残。
また、ポール・マッカートニーはその後、
ウィングスで発表した「Give Ireland Back to the Irish」も放送禁止を喰らった。


そして、それから約50年後、移民問題で苦しんだイギリス庶民は
ブレグジットに賛成し、アメリカではまさかのトランプ大統領の当選。
これらふたつの出来事の根は同じで、イギリスでは、国境を越えてやってくる
低賃金外国人労働者に、半世紀に渡って仕事を奪われ続けた自国労働者の我慢が
限界に達し、アメリカでは、職場が国境を越えて出て行ってしまったために、
仕事を失った白人労働者の怒りが爆発した結果であり、それは世界に拡散された。


経済に国境はないが、政治には国境がある、文化にも国境がある。
「ふたつのまさか」は、世界経済の主流となったグローバリズムに対し、
それぞれの国の労働者が投票行動をとおし、政治によって、
ストップをかけようとした点で共通する。
第45代アメリカ大統領に就任したトランプさんを、クレイジーと評する面もあるが、
「反グローバリズムパワーの代弁者」と認識すべきで、日本政府や財界は、
トランプ大統領が、従来の世界経済体制に理解を示すなどと、決して考えたり、
期待しない方が良い。


4月に米中の首脳会談が予定されているらしい「アメリカと中国の貿易戦争」という、
グローバリズムによる自由貿易への結論が出る。
で、これでなんらかの合意があったとしても、中国の譲歩でしかない。
もう、以前のようなグローバル化一筋のような世界には戻れない。
すでに「グローバリズムの後の世界」へ移ってしまっている。
そして残念なコトに、この世界の大潮流に追いつけていない国がある。
それは日本とイタリアの政治。


日本政府は外国人労働者の大量受け入れを行おうとし、TPPで主導的立場をとり、
中国経済へ再接近しようとしています。
今更、グローバリズムの優等生的な活動を始めるワケですが、
何故こうも、オワコン(終わったコンテンツ)を取り入れるのか?
マイナンバーしかり、TPPしかり、移民しかり、です。


イタリアとの類似点、共通点は、日本もイタリアも中国に接近しているコト、
そして、両国ともにGDPに対する「政府の赤字」が先進国の中で最も多い。
日本は無論1位・2位がイタリア。(政府の赤字は国民の赤字ではないので要注意)
中国とより良い経済関係を持てば、政府の赤字が解消されるとでも思っているのか?
何を見誤っているのかはよくわからないが、世界のトレンド・潮流は、
反グローバリズムであり、正しい判断であるとは到底思えない。


すでに、世界各国の投資家・経営者など、世界の行く先を
いち早く見ようとしている彼らが、グローバリズムの終焉に舵をきっている。
国境を超えた生産や流通は、今後しばらくの期間、停滞していくものと腹を括り、
内需の創出に知恵と資源を投入しようとしている、というかそうせざるを得ない。


というワケで、「国家という古い枠を超えて」とか「世界はひとつ」とか
結局、社会主義的な考えでは、上手く世の中を回せない。
なのである意味「Get Back」で、いいのではないかと思う。